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特別対談
デジタルは、人と人を繋ぐ。
商工会議所の専門家と、「人が変化する」DXを。
福岡商工会議所のデジタル化推進グループは、2023年で3年目を迎えます。
実は商工会議所では、それよりも以前から、セミナー等のデジタル化推進活動は行っていました。しかし、昨今の人材不足、業務改善のニーズ急増を受けて、もっと実際の導入までフォローするような取り組みが必要だと考え、グループとして発足しました。現在は、中小企業や小規模事業者向けに、会員向けサービスとしてすぐに導入できるようにデジタルツールをラインナップしていたり、専門家相談を行ったりしています。

今回は、具体的な3社の取り組みを通して、
「商工会議所にデジタル化の相談をすると、実際にどんな変化が起きるのか?」
をご紹介したいと思います。

 
対談者紹介
インタビュアー
 
3社の取り組みから見えてきた、
「商工会議所でDX」の特徴
 
1.実装だけではない、カスタマイズした提案で伴走支援が続く!
2.売上効率の向上や残業時間の減少に貢献!
3.何でも「とりあえずの相談」が商工会議所でできる!
Q1 なぜ商工会議所(IT専門家)とDXしようと思ったんですか?  
     

風月フーズ 福山

A:相談した際に、「何かの導入」という目先の結果ではなく「どう取り組んでいったらいいのか」というプロセスを支えてもらえると感じたから。

銘茶園 堂本

A:決まったプランの提示ではなく、オーダーメイドで「長い目で見て自社に必要な仕組み」を提案してもらえたから。

みどりや仏壇店 吉川

A:一つ作って終わりではなく、導入後に新しく起こる変化についてもずっと相談できるから。
商工会議所 青木:
皆さんがなぜそう思われたのか、少し詳しく伺えますか。
風月フーズ 福山:
はい。私は、納品するだけではなく、「デジタル化による組織作り」を見据えて伴走頂けていると感じています。
風月フーズ 福山
まず、とある紹介会社さんを通じてIT専門の方とお会いしたのですが、その方とは一時間の面談と弊社から一枚の資料をお渡ししただけで、分厚い見積り資料と金額が返ってきました。ただ、ITのことが分からなくて相談をしているのに、そんな分厚いものを出されても内容はわからないし、局所的な対処という感じで、少なくない社内リソースを割くのに納得感がなかったんです。
商工会議所 青木:
表面的な感じがした、ということでしょうか。
風月フーズ 福山:
そうですね。その後、池田さんにご相談できる機会があり、状況を説明したところ、すぐに「こんなのどうですか」と具体的な提案をもらいました。その時の姿勢や内容で、これからどんな組織を目指していくのか、という大きな目標を一緒に描いていける方だと思いました。私たちの置かれている状況を分析した上で、組織としてどうあるべきか、そのために必要なツールは何か、という提案でしたから。
「何かの導入」という目先の結果ではなく、「どう取り組んでいったらいいのか」というプロセスを支えてもらえるのが商工会議所の専門家の方々なのだと感じています。

銘茶園 堂本:
私が依頼を決めたのは、そのオーダーメイド性です。決まったプランを提示されるのではなく「長い目で見て銘茶園に必要な仕組み」を考えて頂いていると感じています。
銘茶園 堂本
うちは、父が創業して80歳を過ぎても切り盛りしていました。継ぐ予定はなかったところを急遽事業承継となり、入ってみたら父の勘所のようなもので生きてきた会社で、経営状態が数値的にどうなっているのかがわからない、という状況でした。まずは経営状態を見える化しないといけない、でもそのためには何をすればいいのかわからない。そんなことを、他の案件でお世話になっていた池田さんにぽろりとお話ししたところ、うちに必要なITツールをご提案頂きました。実際に導入が完了した後も、色々な相談に乗っていただきながら状態をカスタマイズして、今に至っています。
商工会議所 青木:
そのご相談をしたのは、池田さんが初めてだったのでしょうか?
銘茶園 堂本:
いえ、自分なりにインターネットで検索したり、IT補助金について調べたりして、別のところにも相談はしていました。ただ、ツールや機材は手に入るけれど、その後の運用についてまで親身に提案してくれる、というところは見つけられませんでした。
中小企業の命題の一つに資金調達があると思いますが、幅広い分野の補助金をうまく活用するのに自分一人では限界があるので、商工会議所さんのような「多くの、信頼できる人と繋がれるネットワーク」に辿り着けたことは幸運だったなと思います。

みどりや仏壇店 吉川:
私が今も本当に助かっているのが、作って終わり、何かひとつ導入して終わりではなく、そこから新しく起こる変化についてもずっと相談できるということです。本当に「伴走型」だと思います。
みどりや仏壇店 吉川
私が2001年にみどりや仏壇店に戻った時には、お客様のデータから帳簿まで、全てが手書きでした。「問い合わせがあったら膨大な量のノートを手作業で確認」というのをまずやめたいとシステムを組んだものの、そもそものパソコンがWindows XPでずいぶん前に保証が打ち切られているので、先のことを考えるとまた作り替えないといけない。帳簿もどうにかしたい。問題が山積みで、もう何から手をつければいいのかわからない、という状態でした。
商工会議所 青木:
何かを変えようとすると芋づる式に他の変えなければならないものがありますから、気が遠くなりますよね。
みどりや仏壇店 吉川:
そうなんです。とりあえず、まずは会計ソフトを導入しようということになりました。その頃にたまたま、商工会議所ニュースでマネーフォワード1ヶ月分無料、というものを見つけて、専門家派遣で来て頂いたのが池田さんでした。そこで導入にはやはり新しいパソコンが必要だということになり、自分たちが今まで使っている古い顧客管理システム等があることを相談したら、じゃあうちが新しいパソコンに対応したものを作りますよ、と。
商工会議所 青木:
それは心強い提案です。
みどりや仏壇店 吉川:
もう本当に助かりました。おかげでGoogle Workspaceが使えるようになり、顧客管理システムの移行や、本店と支店間でのファイル共有といった、それまで「非効率的でどうにかしたい」と思っていたことが一気に解決しました。
もちろん自分でもネットで調べたりはしていましたが、マネーフォワードひとつとっても多くのプランがあって、自分たちにどれが合うのか決断するのが難しい。導入後の運用についても不安でした。そこを解決して頂けるだけでもありがたいのに、池田さんにはそこから派生した内容も広くご提案頂いて、今もまだシステムをどんどん作り替えて頂いています。

商工会議所 青木:
ありがとうございます。商工会議所という一般企業とは少し違う機関からの派遣だからこそ、「システムの販売・納品が目的ではない」という特徴が伴走型に繋がっているのかもしれません。
Q2 DXしてどんな効果を実感していますか?  
     

風月フーズ 福山

A:1人当たりの売上効率が大幅に上がり、賃上げに繋げることができました。

銘茶園 堂本

A:経理担当者の残業時間が大幅に減りました。

みどりや仏壇店 吉川

A:社内に「変わってもいいんだ」という雰囲気が生まれ、社員から自発的に意見が出てくる機会が増えました。
商工会議所 青木:
色々な側面で変化が出ていますね。風月フーズさんから伺えますか。
風月フーズ 福山:
私たちは、DXを通じて、1人当たりの売上高が大幅に伸びています。
DX以前は、大体60億円の売上を、パート・アルバイトの方含め700名ほどで運営していました。これが、コロナとDXを経て、今期の見込みでは、50億円の売上を500名ほどで運営できており、1人当たりの売上高は約1.3倍になっています。
商工会議所 青木:
それが結果的に賃上げにも繋がっているということでしょうか?
風月フーズ 福山:
そうですね。人手不足という課題はまだありますが、DXによってさまざまな間接業務が減った結果、今後の社会情勢の変化にも対応できる筋肉質な経営体制を作ることができたと考えています。DXをしていなくて売上効率が上がっていなかったら、なかなか賃上げに踏み切るということはできなかったかもしれないなと思います。
銘茶園 堂本:
私たちの中での大きな変化は、会計ソフトの導入によって、経理担当社員の残業時間を大幅に減らすことができたことです。
その方は長年働いてくださっているので、本当にうちの会社について何でもご存知でみんなが頼りにしているのですが、その分大きな負荷をかけてしまうことがあるのも事実でした。これはどうにか改善したいということで、マネーフォワードを導入しました。それにより、クラウド上にデータがあるため複数人で分担できるようになり、残業時間(時間外労働)は一番多かった時の5分の1程度に減っています。

商工会議所 青木:
それはすごい成果ですね!
銘茶園 堂本:
はい。時間自体が減ったこともですが、単純作業を振り分けることで、「長年勤めてきたその方にしかできない仕事」に集中してもらえるようになりました。DXによって、勤務時間の内容的な質も上がっていると感じます。
福山 堂本 吉川
みどりや仏壇店 吉川:
うちの会社では、社内の雰囲気まで変わって、社員の能動性が上がったように思います。
前は、例えば会議をしても自発的な意見は出ず、議論というよりも伝達事項を伝える時間になることが多かったんです。それが、ここ数年でシステムを色々と変えてきた中で、少しずつ社員から意見が返ってくることが増えました。「今までずっと同じだった店内の商品レイアウト」についても、「変えてもよさそう」という新しい意見を皮切りに、じゃあどう変えるか?について様々な意見が出てきました。
商工会議所 青木:
そんな姿勢の変化が。なぜそのような変化が起きたと思いますか?
みどりや仏壇店 吉川:
DXという「今までのシステムを変える」ことは、うちの会社にとってとても大きな変化でした。そういう変化を受け入れたことで、自分たちも何か変わっていかないと、という気持ちが生まれたのではないでしょうか。「今まで当たり前だったことも、必要があるのか考えてみる」「変えてみてよくなかったら戻せばいい」といった繰り返しを経験したおかげだと思います。「変わっていいんだ」ということに社員が気づいてくれたことが、DXをして一番よかったことですね。
ライクブルー 池田:
みどりや仏壇店さんが言われたような、むしろ「DXによって人と人の繋がりが生まれる」ということがとても大切なことだと私は考えています。
池田
毎日の業務に「ゆとりがない」状況では、たとえ必要でも「何か変えてみよう」という雰囲気は生まれません。システムにできることはシステムに任せられれば、本当にやりたいこと、やるべきことに集中できるはずです。「DXすると仕事が減って楽になる」ということではなく、人と人のコミュニケーションの密度が上がったり思考するゆとりができたりして、「仕事全体の質が上げられる」ということかなと思います。
Q3 DXに悩まれている他の企業へ何を伝えたいですか?
     

風月フーズ 福山

A:DXと言っても一気に全て変える必要はなく、スモールスタートで試行錯誤できます。その経験によって、社員のマネジメント力も上がりました。

銘茶園 堂本

A:古くからの「いいもの」を持っている企業がDXすることは、福岡全体の魅力に繋がります。専門家にも頼りながら、挑戦する価値があると思います。

みどりや仏壇店 吉川

A:何かに悩んでいるなら、商工会議所を活用しないともったいないです!
商工会議所 青木:
DXによってマネジメント力が上がったというのは、みどりや仏壇店さんのお話に引き続き、「DXを通して人が変化する」という興味深い内容です。
風月フーズ 福山:
そうですね。DXするにあたり、池田さんに入って頂いて、各部署のメンバーが集まったチームを作りました。まずそのチームで当時の状況の全体像を把握するのに、実は1年かかりました。
商工会議所 青木:
1年!とても丁寧に進められたんですね。
風月フーズ 福山:
はい。もちろんとても簡単なことは並行して進めていましたが、池田さんが時間をかけてヒアリングや検討をしてくださいました。全体の課題がわかってきたところで、優先順位をつけていく。そして、必要なクラウド系システムの1ヶ月無料オプション等を活用して、試験導入し、その間に現場メンバーのリアクションを確認する。それを各拠点や部署で手分けして行いながら、システムと業務の相性や、部署や現場メンバーの特性などを少しずつ確認していきました。本格導入するまでに、かなり細かいステップで試験・フィードバック・検討を繰り返したので、担当者たちは色々な声と向き合う必要がありましたが、そのおかげで大きな抵抗感なく、問題があればきちんとコミュニケーションによって解決できたと思います。結果的に、会社全体でマネージメントを学ぶとても貴重な機会になりました。池田さんにはその陣頭指揮を取っていただいたわけなので、本当にさすがでした。
青木、池田、福山、堂本、吉川
ライクブルー 池田:
いえいえ、とんでもないです。私は「時間をかけること」はとても大切なことだと思っています。会社によって、規模も人の状態も扱っている情報が違えば抱えていることも全く違うので、ヒアリングや精査は時間をかけたい部分ですね。そして、DXって、ツールを入れているだけのようで、本当は人材育成だと思っているんです。DXは、そのための時間と投資だと私は考えています。

時代が変わればシステムはまた変えていく必要があります。それを見据えて、繰り返される変化に対応できるような、社内の方のITに関する力や組織力自体をどう上げるか、ということも意識していますね。「ずっと私がいないと回らない」という状態では意味がないと思っているので。

商工会議所 青木:
池田さんのその姿勢は、企業の方にとって安心感がありそうです。
銘茶園 堂本:
私も商工会議所さんは、一時的に丸ごと頼れるというのではなく、伴走しながらきちんと会社の力として育てて頂いている、という印象があります。ベンダーさんに頼むとお任せになりすぎてしまって、楽にはなったけど会社の身になっているのか?と思ったりしますが、池田さんは育成目線で根気強くお付き合い頂けるというか。ITリテラシーを高める必要がある、というスタート地点から親身にお付き合い頂ける方と巡り会えるのは、とても貴重なことだと思います。
商工会議所 青木:
「専門家に」と一口で言っても、様々な選択肢があるからこそ分かりにくい部分もありますよね。
銘茶園 堂本:
池田さんにご相談する前の私のような、「うまくいかない焦燥感を感じながら、誰に相談したらいいのかわからない」という中小企業は多いと思います。その点、商工会議所さんでは「何に困っているのかもわからない」という状態から色々な相談に乗って頂ける。福岡には古くからのいいものを持っている会社が多くありますから、このシステムをもっと活用する会社が増えれば、福岡全体の大きな力になっていくんじゃないかと思っています。ぜひ商工会議所さんにも、このシステムがより広く届くような取り組みをお願いします。
みどりや仏壇店 吉川:
うちは以前はほとんど商工会議所さんとのお付き合いはなかったんですが、コロナによって色々な助成金などの問題に直面して相談先を考えた時に、やはり商工会議所さんは「公的機関である」という安心感がありました。今赤字だとか、そういう経営の話も腹を割ってしないといけないですから、民間や知り合いにというのは少し抵抗があったので。そこからお世話になることが増えてみると、いろいろなセミナーもされているし、本当に経営者は活用しないともったいない!と声を大にして言いたいです。銘茶園さんも言われたように、「何がわからないのかわからない」状態でも、何かしら相談さえすれば、本当にうまく「この問題だったらこっちですね、これはあっちですね」と切り分けまでして頂ける。知り合いにも、何か迷ってるならまず商工会議所に相談してみな、と言っています。
堂本、吉川
商工会議所 青木:
ありがとうございます。最初のご相談はもちろん、公的機関という中立的な立場だからこそ、セカンドオピニオンとしてもご活用頂いただけると思います。2023年3月から、NTT西日本さんとQTnetさん、リコーさんと共同で、デジタル系の相談・導入・導入後フォローまで行う「よかデジ」という新サービスも立ち上げています。相談会のようなイベントも含め、そういった取り組みをこれからしっかり発信していかなければならない、と背筋が伸びる思いです。

本日は貴重なお話を本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
一同:
ありがとうございました。
各社のより詳細な取り組み内容や成果は、下記動画でお話ししています。
ぜひご覧ください。


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